五月の四方山話(ごがつのよもやまばなし)
青葉、若葉の季節を迎えますと、そろそろ夏も近づく"八十八夜"の茶摘みの歌が思い出される頃となります。この八十八夜は、立春から数えると陽暦の5月1日〜2日頃にあたり播種の時季とされ昔から茶処では茶摘みの最盛期となります。そして立夏は二十四節気の1つで陽暦の5月5日頃となりますので、いつまでが春で、いつから夏?というちょうど、その年の天候具合にもよりますが、境目のシーズンで、今年は夏になるのが遅いようです。
さて立夏の食物というと、新鮮且つ清香なる"気"が感じられるいわゆる新物という食材が出揃う季節で、一年で最初の収穫物を味わえるという口福をもたらすものなのです。その代表的なものは新茶であったり、山菜、たけのこやそら豆、グリンピース等の野菜が多く、そしてフルーツ等があります。最近富に感じるのは、その季節の物が、一年中常にあったりする現実で、自然の恩恵に対し感謝の念が薄らいでしまいます。料理を作ったりレストランで食べるメニューは、自然の幸が感じられる料理をぜひお選び下さい。
お茶といえば、日本では茶の湯の茶会が開かれますが、中国の茶処では「茶宴」というのがあります。日本でよく飲まれている烏龍茶の故郷、福建省の武威山(ぶいさん)では、"青茶"の岩茶・烏龍茶で名高く又、「茶で身上つぶす」というのがわかる程、値段も高いのですが、お茶を用いた料理のフルコースがここにはありました。もちろん中国茶の代表的なお茶といえば"緑茶"で長江流域に広範囲に分布しこの種類も多いのですが、龍井茶の故郷の杭州にも「龍井蝦仁(ロンジンシャーレン)」という緑茶の銘茶があって、これはまさに立夏の料理にふさわしいものです。
お茶の種類は六大茶が有名ですが、"青"、"緑"の他は皆様のよくご存知の紅茶は"紅"で、祁門(キーメン)紅茶は、インド・セイロンに並ぶ世界三大紅茶の1つです。その他"黒"は御発酵茶で餅茶、団茶等、様々な形で多種あるプーアル茶です。あまり知られていない弱発酵の白牡丹や白豪銀針(はくごうぎんしん)などの"白茶"と"黄茶"は芽の部分を用いた君山銀針(くんざんぎんしん)など弱後発酵で難しい味わいのお茶があるのです。これらをお菓子の友としてぜひ一度、お試し下さい。
ちなみに月餅でいえば、塩卵入りの月餅には、"黒茶"のプーアル茶、そしてこの春のさくら月餅には、"青茶"の烏龍茶、"緑茶"をおすすめ致します。
お茶がお好きな方には、日本ではあまりない茶宴を立夏食材を用いて、しかも六大茶との妙味「立夏清香宴」を計画しておりますので(前菜からのフルコース、デザート迄お茶を駆使しております)、ぜひお試し下さい。